金木犀はなぜあんなに強い香りがするの? ~金木犀がいい匂いを出している理由~

10月のある日、家族で近所を歩いているとどこからともなく漂う良い花の香りに気づきました。
「何の匂い?」
金木犀でした。
金木犀の匂いがすると「ああ、本当に秋になったんだな」と毎年気づかされます。
「なんでこんなににおいがするの?」
そうなんです。金木犀が咲いているのは、ご近所の庭先。
金木犀の木から何メートルも離れている時から、香りがするのです。
なぜ金木犀はこんなに強い匂いなのでしょうか?
そもそもなんで金木犀っていい匂いがするのでしょうか?
キンモクセイの香りについて調べてみました。

なぜ金木犀はいい香りがするの?

それは、キンモクセイの花から以下の成分が放出されているためです。
金木犀の香りの成分を列挙します。

  • γデカラクトン
  • リナロールオキシド
  • リナロール
  • βイオノン
  • αイオノン

それでは、何が主要成分なのか、それぞれどんな成分なのか見ていきましょう。

主要成分は?

以下の論文によりますと、主要成分は、γデカラクトンとリナロールオキシドとのこと。
それぞれについてもう少し詳しく見ていきましょう。

γデカラクトン

γデカラクトンは、以下の構造の化合物です。

γデカラクトンが入っているものとしては、

  • 桃、杏、イチゴなどの天然の果物、
  • 発酵食品
  • 和牛!
  • ウイスキー!
  • 若い女性特有の体臭!!

とのこと。
天然に存在する、多くの人が好ましく感じる匂いのようです。
分子量は170.25、沸点は281度とのことで、それほど揮発性の高い物質ではないようです。

リナロールオキシド、リナロール

リナロールは、以下の構造の化合物です。

リナロールの分子量は154.25、沸点は198℃のことでそれほど揮発性は高くなさそうです。

リナロールオキシドは、リナロールの誘導体で以下の構造の化合物です。

リナロールオキシドの分子量は170.25、沸点は188℃とのことで、こちらもそれほど揮発性の高い物質ではなさそうです。
リナロールは、スズラン、ラベンダー、ベルガモットの香りを持ち、香料として多く使用されている物質だそうです。
自然界からは、ローズウッド、リナロエ、芳樟から取れるそうです。
その他、ネロリ、ラベンダー、ベルガモット、クラリセージ、コリアンダーの精油にも含有されているとのこと。

αイオノン、βイオノン

それぞれイオノンの異性体で、二重結合の場所が異なり、臭いも異なります。

イオノンはベリー、茶、タバコに多く含まれるそうで、香料として多く利用されているようです。
イオノンの分子量は192.30。
αイオノンの沸点は131℃、βイオノンの沸点は267℃。
αイオノンは、金木犀の香りに含まれる成分の中で、最も沸点が低い物質ですので、香りを遠くまで飛ばすことに関係しているかもしれません。

以上の成分がバランスよく混じることで、金木犀の良い香りとなっているのです。

なぜ金木犀はこんなに強い香りなの?

そもそも人はなぜ香りを感じるのでしょうか。
かおりの原因となる物質が鼻に入ると、鼻腔最上部の嗅上皮と呼ばれるところに到達します。
すると、嗅上皮にある嗅細胞がかおりの原因となる物質を感じ、その情報が嗅神経を伝わり脳へ到達して、香りを感じるのだそうです。
つまり、香りを感じるのに必要なのは変わりの原因となる物質が鼻の粘膜につくこと。
※以下は私見も含みますので、ご参考程度にご覧ください。

なぜ金木犀が特にこんなに強い香りなのかを考えると、

香りの原因となる物質がたくさん人の鼻の粘膜に届いているか
人間が感度良くキャッチできる香り成分を発しているか

のどちらかと考えられます。
ここでもう一度金木犀の香りの成分を見てみると、それぞれの物質は特に金木犀特有なものではなく、他の果実や食品にも含まれるものです。
なので、金木犀は、人間が感度良くキャッチできる特別な香り成分を発しているから強く感じる訳ではなくて、単に金木犀が発している香り成分が多く、人間が鼻に届いているためと考えられます。
金木犀の香りの主要成分であるγデカラクトンやリロナールの誘導体は、たぶん他の花に比べて多く作られているのでしょう。
そしてこれが遠くまで届くということは、比較的沸点の低いイオノンも何らかの役割を果たしていると考えられます。
比較的多くの量のγデカラクトンやリロナールが作られていて、程よいバランスでイオノンが混ざっているので、強い匂いで、しかも遠くまで香りが届くのではないでしょうか。

金木犀の香りはどこまで届くのか

香りについて調べている時に面白い記事を見つけました。
静岡県にある三嶋大社のHPです。
三嶋大社には樹齢1200年と推定される金木犀の態度があるそうです。
また、記録によれば
「薄黄色で可憐な花は甘い芳香を発し、それは神社付近はもちろん遠方までにおよび、時には2里(約8キロ)先まで届いた。」と伝えられているとのこと。

8キロというのは実際には?ですが、昔の人が2里という程までに遠くまで香りが届いたということなのでしょう。
1200年前の人も、金木犀の香りを感じ、秋を感じていたかと思うと私の人が身近に感じます。

では、なぜ金木犀は良い香りを出すのでしょうか?

今度は他の生き物との関わりについて考えてみます。
金木犀の金はなぜあのように良い香りを出すように進化したのでしょうか。
それには、そもそも「なぜ花には香りがあるのか」を知る必要がありそうです。
花の香りが良い香りなのか悪い香りなのかはあくまでも人間がかいだ時、もっと言うと人間個人で書いた時の感じ方によります。
(金木犀の香りが苦手だという方もいますよね。)
でも、花の香りは、本当は虫のためにあるのです。
花が、香りを出す理由は以下の二つに集約されるそうです。

嫌な虫を寄せ付けないように、虫が嫌いな香りを出し虫を退ける。
実や種ができるのを助けてもらうために、虫を引き付ける香りを出して、虫を呼ぶ。

以下の論文によりますと、金木犀の花の香りには蝶の吸蜜行動を阻害する働きがあるそうです。
しかし、金木犀の花の香りには特定の昆虫を引きつける働きはないようです。
ただ、結果として、金木犀の香りを嫌わないホソヒラタアブが金木犀の花の蜜を吸いに来ているとのことです。
(ニュアンスとしては、ホソヒラタアブは金木犀の香りが特別に好きなわけではなくて、金木犀の花の匂いが嫌いではないようです。)
同様に以下の論文によりますと、金木犀の原産地には、ひょっとしたら金木犀の花の香りに誘引される昆虫がいるのかもしれないとのことでした。
金木犀の原産は中国。
中国ではまた別の昆虫が金木犀によってきているのかもしれません。

香りは植物にとっての言葉

植物は人間や動物と違って、言葉や行動で他の生き物とコミュニケーションを取ることができません。
でも、このように香りを出すことで、他の生き物の行動に影響を及ぼしているのです。
植物にとって香りを発することは、コミュニケーションの手段を一つなのです。
植物同士は香りで会話しているという説もあるようです。

残念ながら金木犀の香りは受粉には結びついていない

チョウ類を退けて、特定の種類のアブを引き寄せている金木犀。
ですがせっかく来てくれたホソヒラタアブは金木犀の受粉には関与していないそうです。
なぜなら、金木犀には雄株と雌株があって、日本には雄株しかないから!
日本の金木犀は、いくら花粉を出しても、受粉に結び付けることができないんです、なんだか残念……。
つまり、日本の金木犀は中国からやってきて以来、挿し木を中心に増やされているそうです。
ソメイヨシノのように全ての金木犀が完全に同じDNAであるかどうかは分かりませんが、日本で種を作っている他の植物に比べると、遺伝子的に揃っているとはいえそうです。
ソメイヨシノの開花時期ほどではないかもしれませんが、金木犀の開花時期が秋の知らせと考えるのは、妥当かもしれません。

雄株しか必要なかった?

金木犀は良い香りがするので、昔はトイレの近くに積極的に植えられたそうです。
また一般に植物は雄花の方が雌花よりも香りが強いそうです。
(花粉を持つ雄花はより強く、虫たちを誘引するのかもしれませんね。)
そう考えると、日本人の用途的には香りの強い金木犀が欲しいわけですから、雄株のみで充分。雄株になるか、雌株になるかわからない種よりも、確実に浮かぶになる雄株の差し木の方ほしいし、それで十分だったのではないでしょうか。

まとめ

金木犀の香りは、桃などの香りにも含まれるγデカラクトン、スズランなどの香りにも含まれるリノナール類、ベリー類などの香りにも含まれるイオノンによるもの。
良い香りを出しているのは、特定の虫を寄せ付けないため。
そして、もしかしたら特定の虫を惹きつけて、受粉を助けてもらうため。
だけど、日本には金木犀の雌株がないので、実際には受粉に至らない。

ことがわかりました。
金木犀の香りが秋の香りだというのは、私達人間の捉え方で、本当は、金木犀の香りは、虫たちに向けたメッセージだったのですね。

参考文献

  • Wikipediaのγデカラクトン、リナロール、αイオノン、βイオノンのページ
  • http://kokin-aroma.jp/modules/gnavi5/index.php?lid=4